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歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK
#14 熱戦の舞台の外側に広がる、飾らない甲子園の魅力を探しに

#WELL-BEING 2023.10.20

歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK – 甲子園・倉本尚幸編(アシックス商事)-

※2023年8月時点の取材内容で構成しています。

その街をよく知るナビゲーターがおすすめの散歩コースを紹介しながら、自身のウォーキングスタイルについて語る連載企画「SANPO TALK」。第14回はアシックス商事でシューズのラスト(靴型)設計を担当している倉本尚幸が、1年前に移り住んだばかりだという兵庫県西宮市の甲子園周辺をナビゲート。言うまでもなくこのエリアは野球場が有名ですが、周囲は閑静で住みやすい住宅街として知られています。今回は歩きながら甲子園周辺の飾らない魅力に触れていきましょう。

14回目のSANPO TALKは、阪神本線の甲子園駅からスタート。甲子園と聞くと真っ先に野球場が思い浮かびますが、熱戦が繰り広げられる球場の外側には、大型ショッピングモールや公園などが整備され、ファミリー層に人気な住宅街という一面ももっています。そんな甲子園の街を案内してくれるのは、アシックス商事でスニーカーや革靴、パンプスなどさまざまなシューズのラスト(靴型)製作を担当している、倉本尚幸。結婚を機に甲子園に移り住んで1年ほどですが、もうすっかりこの街に馴染んでいるそう。

「実は僕も甲子園というと野球のイメージしかありませんでした。でも商業施設が揃っていて、梅田や三宮といった都市部へのアクセスもしやすい場所なので、いざ住んでみるととても暮らしやすいですね」

ここ10年ほどで徐々に改修工事が行われ、きれいに生まれ変わったばかりの甲子園駅西口の目の前にあるのが阪神甲子園球場。この街を歩くうえで避けては通れない、甲子園のランドマークです。

阪神タイガースの本拠地にして、春・夏の高校野球大会の舞台。まさに「野球の聖地」とも言える阪神甲子園球場は、来年(2024年)8月で開場100周年を迎えます。ちなみに今では地名としても定着している「甲子園」ですが、もともとはこの球場のためにつけられた名称。開場した1924年が、十干の初めの「甲」と十二支の初めの「子」が重なる「甲子(きのえね)」という60年に一度の縁起のよい年だったことに由来します。

「自分が住んでいる街にこんなに大きな球場があるのは、今でも不思議な感覚ですね。試合がある日はここに数万人が集まってごった返しますが、普段はご覧のとおり、いたって静かなんですよ」

とはいえ、美しいツタが生える壁の向こうからは、今にも大観衆の歓声が聞こえてきそう。そんな迫力ある球場をあとにして、この地域を南北に走るその名も「甲子園筋」を南に向かって歩きます。

「次は最近見つけてすごく気に入ったお店を紹介します」

そう言って案内してくれたのは、「甲子園 青果 氣張いやんせ」。懐かしい昭和の雰囲気をイメージした店構えが目を引く青果店です。

「僕の妻が管理栄養士をしているので、栄養バランスに気を付けてくれていて普段から食卓には野菜や果物が多く並ぶんです。家の近くにも行きつけの八百屋さんがあるんですが、たまたまその日買いたかったスイカがなかったことがあり、探し歩いて辿り着いたのがここでした。そのときはスイカと桃を買ったんですが、どちらもすごくおいしかったですよ」

お店の内装は音楽好きの店主のDIYによるもの。店頭にはあえてたくさんの種類の野菜や果物を揃えることはせず、その日の仕入れで目利きした「旬」を厳選して並べるというのが店主のこだわり。

「今日は暑いですし、これを買っていこうかな」

倉本が手に取ったのは、こちらの人気商品のひとつである冷凍フルーツ。この日は串に刺さったぶどうや梨、パイナップルが冷やされていた中、チョイスしたのはシャインマスカット。

「こんな大粒のシャインマスカットを凍らせるなんて贅沢ですよね。味は濃厚ですごくおいしいです」

冷たいフルーツを片手に再び歩き出したところで、5月にアシックスグループ内で行われたウォーキングイベントの話題に。そのイベントで特別賞を獲得したのが倉本でした。

「1カ月間で歩いた、または走った距離を企業対抗で競い合う『さつきラン&ウォーク』というイベントがあり、アシックスグループの各社もそれに参加していました。ただ私たちは同時に『アシックスグループ対抗ウォーキングバトル』と称して、グループの従業員同士でも歩いた歩数を競っていたんです」

実は倉本は大学院時代に靴底の摩耗に関する研究を行っており、その一環でひと月に200kmも歩いたことがあったそう。ゆえにこの大会にも自信があったようですが……。

「アシックスグループの従業員の中には上には上がいて、上位入賞はできませんでした。僕は1カ月で52万8000歩ほど歩いたんですが、これがたまたま、アシックス創業者である鬼塚喜八郎の誕生日『5月29日』に近いということで特別賞をいただきました」

ちなみにこのイベントでは、特別賞の獲得以上にうれしかったことがあったのだとか。

「仕事の合間や昼休みのたびに、『最近どれくらい歩いてます?』というひと言をきっかけにして、それまであまり接点がなかった従業員とも気軽にコミュニケーションを取ることができたんです。イベントのおかげで、従業員同士の一体感が強くなったように感じますね」

やがて前方に見えてきたのは、大阪湾に向かって南北に流れる武庫川(むこがわ)。川沿いにはサイクリングロードや緑地が整備され、地元の人たちの憩いの場となっています。

「ここに来ると、ウォーキングやランニングを楽しんでいる人をよく見ます。もちろん自分自身もその一人なんですけど(笑)。自宅からは少し離れていますが、先のウォーキングバトルの期間中は歩数を稼ぐために、よくここまで歩きに来ていました」

川沿いを吹き抜けていく風が心地よいので、足取りも心なしか軽やかに。このままずっと歩いていたくなる道ですが、この日最後の目的地を目指して進路を西へ変更。「甲子園けやき散歩道」と呼ばれている旧国道を進みます。

「この辺りは歩道がきれいに整備されていて歩きやすいんです。ショップや飲食店も数多く立ち並んでいて、甲子園に住んでいる人には馴染みのある通りです」

10分ほど歩いて到着したのは「ベルン 甲子園本店」。創業から55年。甲子園周辺だけで5店舗を構える、まさに地域に密着した洋菓子屋さんです。

「甲子園でケーキや焼き菓子を買うならベルン一択。そう言っても過言ではない老舗です。妻は学生時代からよくここでお菓子を買っていたみたいですよ」

ベルンのシュークリームがお気に入りという倉本ですが、この日はショートケーキをオーダー。お散歩のあとのスイーツはまた格別です。

ちなみに店舗2階のカフェスペースは、8月いっぱいで惜しまれつつ閉店。今後は1階でのお菓子販売に専念されるそうです。

「甲子園の周辺には洋菓子屋さんや和菓子屋さんがたくさんあって、甘いもの好きの僕にはたまりません(笑)。その中でもベルンのように、同じ場所で長く愛されているお店に来ると、やっぱりホッとしますね」

こうして今回のSANPO TALKは終了。甲子園という名称がもつイメージとは少し違う、気さくで落ち着きのある街の表情を知ることができました。「他にもまだまだ紹介したいスポットがあったんですよ」と笑顔で話す倉本。彼の言葉どおり、歩けば歩いた分だけ、甲子園はまた別の表情を見せてくれそうです。

阪神甲子園球場
住所:兵庫県西宮市甲子園町1-82
電話:0798-47-1041

甲子園 青果 氣張いやんせ
住所:兵庫県西宮市甲子園九番町1-7

ベルン 甲子園本店
住所:兵庫県西宮市学文殿町1-8-19
電話:0798-47-4958

PROFILE

倉本尚幸(くらもとなおゆき)
兵庫県神戸市出身。大学院を卒業後、2017年にアシックス商事に入社。以来、自社シューズのラスト(靴型)製作一筋。5月に行われた『アシックスグループ対抗ウォーキングバトル』では特別賞を受賞。趣味はサッカー観戦とラジオを聴くこと。最近のマイブームはYouTubeでイタリア料理人の動画を見ながらパスタを作ること。
Photo : Kohei Watanabe
Edit+Text : Taro Takayama(Harmonics inc.)