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歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK
#17 気取らず思うままに遊歩するのが大人の証。静かな平日の表参道散歩

#WELL-BEING 2024.03.01

歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK -表参道・秋元 陸編-

※2024年1月時点の取材内容で構成しています。

その街をよく知るナビゲーターがおすすめの散歩コースを紹介しながら、自身のウォーキングスタイルについて語る連載企画「SANPO TALK」。第17回は、外資系コンサルティング会社の日本法人でカントリーマネジャーを務める秋元 陸さんが、学生時代からなじみがあり、今も仕事でよく訪れるという表参道をナビゲート。洗練された街並みにおしゃれなスポットが数多く点在するこのエリアの普段の顔を、散歩しながら探していきます。

スタイリッシュで洗練された雰囲気が魅力の街、表参道。原宿、外苑前、青山などから構成されるこのエリアは、ファッション、グルメ、アートといったあらゆる文化の最先端を体感できる、都内でも屈指のおしゃれな街として知られています。

そんな表参道を巡る今回のナビゲーターは、イギリスを拠点とするアドバイザリーファームの日本法人でカントリーマネジャーを務めている秋元 陸さん。さまざまな業界のイノベーション事例やトレンドを調査し、企業の経営戦略や新規事業をコンサルティングするのが秋元さんの主な仕事。クライアントからの依頼で、東京の最先端のトレンドを調査することも多いのだとか。

「リサーチで表参道の話題の飲食店やポップアップに行くことがよくあるんです。その際には周辺を歩きながら街全体の雰囲気を俯瞰して見たり、訪れている人の年齢層やファッションなどもチェックして本部に報告しています。あらゆるトレンドの先端を行く表参道は、必然的に調査で歩く機会も多い街なんです」

散歩は、渋谷と表参道をつなぐキャットストリートからスタート。古着からハイブランドまでさまざまなアパレルショップが並ぶだけでなく、暗渠という地形を生かした個性的な建築物やアートギャラリーなども点在する通りです。

「表参道はもともと変化の激しいエリア。キャットストリートも“通り”というテンプレートは変わりませんが、その上に立つお店や施設といったアプリケーションが、時代とともにアップデートしている。その新陳代謝のさまが、歩いてみるとよく分かります」

そんなキャットストリートと表参道の角に立つ商業ビルの中に「MoMA Design Store 表参道(モマ デザインストア 表参道)」があります。MoMA(=ニューヨーク近代美術館)の公式ショップで、有名アーティストの関連商品や雑貨が並ぶ、文字通りミュージアムのようなストアです。

「常に面白いモノと出会えるお店で、以前からよく来ていました。実際に文具やコインケースを買ったこともあります。アーティスティックな雑貨や、他ではなかなか見られないアイテムを見ているとワクワクしますし、仕事につながるインスピレーションも湧いてきますね」

秋元さんは高校時代にアメリカへ留学していた経験があり、ニューヨーク近代美術館にも足を運んだことがあるのだそう。

「ニューヨークではアートはすごく身近な存在なんです。当時は高校生で入館料が安かったこともあり、あらゆるミュージアムに行っていました。その中でもMoMAは大規模な増築が行われて再オープンした頃だったので、話題のスポットとしてとても流行っていた記憶があります」

MoMAのキュレーターが認めた2000を超えるアイテムたちをひととおり眺めながら、懐かしいニューヨークにも思いを馳せた秋元さん。「次は僕のお気に入りのベーカリーカフェでコーヒーでも飲みましょう」と、散歩を再開します。

表参道の歩道橋を渡り、外苑西通りへと抜ける商店街(原二本通り)を進むと、テラス席までお客さんがあふれるお店がありました。オープンから15年経つ今も、週末には行列ができる人気店「パンとエスプレッソと」です。

「コーヒーが好きなので散歩がてらにお茶をしたり、お土産でパンを買ったり。ここは表参道の中でもよく利用するお店のひとつなんです」

そう言って、コーヒーを片手に少しブレイク。海外のクライアントに合わせて、早朝や深夜にミーティングなどを行うことも少なくないという秋元さんですが、多忙な日々の中でどのように散歩を楽しんでいるのか聞いてみました。

「街中から生まれる新しいトレンドを見つけたり、『なぜここに人が集まるのか』といったことを分析するのが仕事なので、街を歩くのは僕にとって当たり前になっています。あと業務とは別に、プライベートでのんびり歩きながら考えごとをすることもあります。家の近所などの慣れた道を歩いているときは、余計な情報が目に入ってこないので、特に思考のスイッチが入りやすいかもしれません」

さらに秋元さんは、歩きながらこんな意外なことも。

「散歩をしながらウェブ会議に参加することがあります。さすがに自分がメインスピーカー役となる会議では難しいですけどね。時差の関係で早朝から始まる会議などは、オフィスまでの道中で参加すると時間の有効活用にもなりますし、歩いていると自然と心と頭がクリアになって会議の内容がスッと入ってくる。あと、海外にいる先方に画面越しで東京の景色を見せてあげると、とても喜ばれるんですよ」

「このあと仕事の合間に食べます」と、お土産に買ったパンを携えて次のスポットへ。商店街を抜けた先の外苑西通り沿いに、外国の国旗を掲げたかわいらしいお店がありました。

「WORLD BREAKFAST ALLDAY 外苑前(ワールド・ブレックファスト・オールデイ 外苑前)」は、“朝ごはんを通して世界を知る”がテーマのレストラン。イギリス、アメリカ、台湾の朝ごはんをレギュラーメニューとし、さらに2カ月ごとにフィーチャーする国を変えながら、その国で親しまれている朝ごはんも提供しています。この日は、ヨーロッパのハンガリーの朝ごはんがメニュー入りしていました。

「海外に行く機会は多い方だと思いますが、ハンガリーには行ったことがないんです。どんな料理がいただけるのか楽しみです」

メニュー作りにあたっては、大使館のシェフや政府観光局のスタッフなど現地出身の方が協力しているそうで、毎回本場さながらの料理が楽しめるというこちらのお店。やがて秋元さんのもとにハンガリーで定番の朝ごはんが運ばれてきました。

「この燻製ベーコンとハンガリー風のオムレツがパンとよく合います。随所に使われているパプリカの彩りも華やかで、朝から元気が出そうな食事ですね」

聞けばハンガリーはパプリカ発祥の地だそうで、朝ごはんに限らずいろいろな料理で使われる定番食材でもあるのだとか。

「美味しい食事を通してその国の文化を深く知れるのはすごく面白い。また別の国の朝ごはんも食べに来たいです」

今回の散歩の締めくくりで足を伸ばしたのは、「明治神宮外苑いちょう並木」。

「通っていた大学が近かったので、当時からここにはよく来ていました。好きな女性と歩いてそこのベンチに座ったり……淡い思い出も蘇ってきます(笑)」

花火大会が行われる夏やイチョウの葉が黄色に色づく秋は特にぎわう並木道ですが、冬枯れの雰囲気も哀愁があってまた一興。最後に、秋元さんにとって表参道はどんな街なのか聞いてみました。

「学生時代から所縁がある場所ではありましたが、当時の僕からすると敷居が高いお店も多く、そうしたお店に緊張せずに入れるようになったのはつい最近のこと。若い頃は若い頃で楽しかったんですが、大人になるとまた別の魅力が見えてくるのが表参道の面白いところだと思います。ようやく僕もこの街が“分相応になった”と言えるのかもしれませんね」

MoMA Design Store 表参道
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
電話:03-5468-5801

パンとエスプレッソと
住所:東京都渋谷区神宮前3-4-9
電話:03-5410-2040

WORLD BREAKFAST ALLDAY 外苑前
住所:東京都渋谷区神宮前3-1-23
電話:03-3401-0815

明治神宮外苑いちょう並木
住所:東京都港区北青山2丁目付近
電話:03-3401-0312(明治神宮外苑代表)

PROFILE

秋元 陸(あきもとりく)
1985年、東京生まれ。アメリカでの高校生活を経て青山学院大学に入学。在学中から金融機関で働き、大学卒業後は大手IT企業でコンサルティング業務に従事。その後独立し、外資系スタートアップの立ち上げや事業開発に携わり、2019年からはイギリスに本拠を置くコンサルティング会社の日本支社でカントリーマネジャーを務めている。
Photo : Sogen Takahashi
Edit+Text : Taro Takayama(Harmonics inc.)