歩く、話す、見つける、<br class=とっておきの街歩き。
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歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK
#11 観光地から少し離れて。御代田で街の余白を楽しむ

#WELL-BEING 2023.08.22

歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK -軽井沢/御代田・米田祐記編(MMoPプロジェクト運営スタッフ)-

※2023年7月時点の取材内容で構成しています。

その街をよく知るナビゲーターがおすすめの散歩コースを紹介しながら、自身のウォーキングスタイルについて語る連載企画「SANPO TALK」。
第11回は軽井沢/御代田(みよた)編。ナビゲーターは、軽井沢のほど近く、御代田町にある複合施設「MMoP(モップ)」の管理人を務める株式会社アマナの米田祐記さん。この春、東京からMMoPがある御代田町に拠点を移したばかりの米田さんが、もうすっかり馴染んでしまったという地元のオススメスポットを案内してくれます。

今回のSANPO TALKは、大自然に囲まれ風光明媚なリゾートが多く、夏場は避暑地としても親しまれている長野県が舞台。なかでも軽井沢は19世紀から開発された由緒ある避暑地・別荘地で、皇族をはじめ数多くの文化人や著名人に愛された高原リゾートです。

美術館や博物館といった文化施設が数多くある軽井沢ですが、そこからほど近い御代田というエリアにあるのが、かつてのメルシャン軽井沢美術館跡地に整備された「MMoP(モップ)」。写真美術館を中心にギャラリーやインテリアショップ、レストランなどが集まる複合施設です。

今回はそんなMMoPの運営・管理を行っている株式会社アマナの米田祐記さんに、御代田周辺の散歩コースを案内してもらいます。集合場所はしなの鉄道の御代田駅です。

「こっちで生活していると車を使うことが多いんですが、今日は一日歩いて地元を巡れるので楽しみです」

そう言いながら、早速ご自身の職場であるMMoPを目指して散歩がスタート。たしかに車移動が増えたという米田さんですが、もともと歩くことも好きなのだとか。

「東京で暮らしていたときは、仕事終わりに1~2駅分歩いて帰っていました。だから御代田町に来てからも、近所の公園なんかをふらっと散歩することがあります。ただ街灯が少ないので夜に歩くことは減りましたけどね」

反対側の歩道にはお散歩中の園児たちが。みんな一斉にこちらに向かって「おはようございます」と挨拶してくれます。慣れた様子で「おはようございます」と手を振り返す米田さん。

「御代田町の園児や小学生は、みんなこうして挨拶してくれるんですよ。最初は驚きましたが、こっちもうれしいし、気持ちがいいし、とても良い習慣だなって思います」

10分ほどのどかな道を進むとMMoPが見えてきました。訪問時はちょうど「浅間国際フォトフェスティバル 2023 PHOTO MIYOTA」の会期中(9月3日まで開催)。国内外のアーティストによる写真作品がミュージアムの建物内だけでなく屋外にも並べられ全身でアートを体験できます。

「MMoPは雄大な浅間山をバックにアートと気軽に触れ合える施設です。衣食住にまつわるショップや飲食店も揃っているので、御代田周辺をお散歩する際の拠点としてもおすすめですよ」

次に米田さんが案内してくれたのは、御代田駅のロータリーの目の前にある「CORNER SHOP MIYOTA」。

「オーナーは東京のデザイン事務所でディレクターをされていた前村達也さんという方。2020年に御代田町に移住して、今年4月にこのスペースをオープンされたんです」

CORNER SHOP MIYOTAはカフェやバー、ギャラリーといった機能をもつ1階と、ゲストハウスとなっている2階からなるコミュニティスペース。かつては時計宝飾店だったという空き家を、およそ1年かけて現在の形にリノベーションしました。

「駅前という分かりやすい立地もあって、移住仲間や地元の人が自然と集まってきます。コーヒーやお酒を飲みながら、何気ない会話はもちろん、御代田の街や仕事のことについても情報交換できる交流の場になっているんですよ」

居心地のいい空間につい長居してしまいましたが、時計を見るともうすぐお昼。次は地元の人に愛されている絶品ランチのお店を目指します。

東京で勤務しながらMMoPの運営に携わってきた米田さんですが、今年の3月に御代田町に移住したばかり。東京との違いに戸惑いはなかったのでしょうか。

「それがほとんどないんですよね。今やリモートでできる仕事も多いので、住んでいる場所はさほど関係ないのかなと思います。あと僕は香川県出身なので、こうしたのどかで自然豊かな場所に住むことに抵抗もありませんでした。僕のように移住してきた人たちも多いので、新しい友達をつくりながら楽しんで生活できています」

御代田駅前から東西に伸びる道を15分ほど進むと、タイ料理店の「ナムプン」が見えてきました。

「あるとき、仕事の合間のランチでたまたま用意されていたのが、ナムプンでテイクアウトしたお弁当でした。それがびっくりするほどおいしくて、それ以来お店にも足を運ぶようになったんです」

米田さん曰くどのメニューを食べてもおいしいため、東京から仕事仲間や友人が来た際には必ず連れて行くというイチオシのお店なんだとか。

「今日は何を食べようか迷いますね。あえてこれまで頼んだことがないメニューにしてみようかな」

そう言ってオーダーしたのは、「ラーナームー」というタイ風のあんかけ焼きそば。昔ながらの食堂のような店内にはタイの食材や雑貨も売られ、不思議と流れる時間がゆったりしているように感じます。しばらくすると、ラーナームーが運ばれてきました。初挑戦のメニュー、果たしてお味は?

「すごくおいしいです。もちもちの麺とあんかけのやさしい味がクセになりますね。またリピートしたくなるメニューが増えてしまいました(笑)」

腹ごしらえを済ませたあとは、いよいよこの日最後の目的地、「Gokalab(ゴカラボ)」というコワーキングスペースへ。歩いてきた道をまっすぐ東に向かって15分ほど。「ここです」と案内されたのは、コワーキングスペースというより役場のような佇まいの建物でした。

「ここはJA(農業協同組合)の施設だった建物をリノベーションした施設なんです。1階はカフェになっていて、ドリンクをオーダーすればワーキングスペースとして使うことができるんです。僕も普段からここでよく仕事をしているんですよ」

Gokalabは、「はたらくが広がる」をテーマにしたスペース。近年増加している移住者のためのワーキングスペースとして、またここを利用する人たち同士で、新しい活動やプロジェクトを始めるきっかけ作りの場として、2022年にオープンしました。2階は主に会員向けで、カードキーで24時間いつでも出入りできるワーキングスペースとなっています。

米田さんも席につくなりパソコンをオープン。溜まっていたメールに返信したり、「15分だけすみません!」と重要なリモート会議に顔を出したりと、散歩中ながらGokalabをしっかり活用します。

「天井も高くて明るいので、ここだと作業が捗るんですよ。東京だとチェーン系のカフェで仕事をする人が多いですよね。でもこの辺りにそういったお店はないので、ここが貴重な仕事場のひとつになっているんですよ」

帰りがけには、米田さんと同じように御代田町に移住してきた仲間とも遭遇。それだけGokalabは、地元の人たちにとってのハブのような空間になっているのです。

こうして今回のお散歩は終了。最後に、米田さんに御代田町の魅力を聞くと、「余白」という答えが返ってきました。

「お隣の軽井沢ほどの観光地ではないですし、大型ショッピングセンターがあるわけでもない。どちらかといえば、ありのままの自然や街並みが残っている場所です。一方で、MMoPやCORNER SHOP MIYOTA 、Gokalabのように、それまでなかった空間や居場所も少しずつ増えてきています。ここには、これから自分たちの手でどんな色にだって染められる余白がある。そこが御代田という街の面白いところだと思います」

MMoP
住所:長野県北佐久郡御代田町大字馬瀬口1794-1

CORNER SHOP MIYOTA
住所:長野県北佐久郡御代田町栄町2422-55

タイ料理 ナムプン
住所:長野県北佐久郡御代田町御代田3925-6
電話:080-5109-7990

Gokalab
住所:長野県北佐久郡御代田町草越1207-23
電話:0267-31-0661

PROFILE

米田祐記(よねだゆうき)
香川県出身。出版社でメディアの編集に携わったのち、2019年に株式会社アマナに入社。長野県北佐久郡御代田町にあるミュージアムやショップの複合施設「MMoP」の運営・管理業務を担当。2023年3月に東京から御代田に拠点を移したばかり。
Photo : Sogen Takahashi
Edit+Text : Taro Takayama(Harmonics inc.)