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歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK
#10 飾らず気取らず。上大岡で自然体のヨコハマに出会う

#WELL-BEING 2023.07.21

歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK -横浜 上大岡・鴇崎魚彦編(株式会社イーシーナ代表)-

※2023年4月時点の取材内容で構成しています。

その街をよく知るナビゲーターがおすすめの散歩コースを紹介しながら、自身のウォーキングスタイルについて語る連載企画「SANPO TALK」。
第10回は、「なぞときFUNロゲイニング」の主催をはじめ、幅広くアウトドア事業を手がけている株式会社イーシーナの代表取締役社長・鴇崎魚彦(ときざきなひこ)さんが、3年前から住んでいるという横浜・上大岡の街をナビゲート。中華街やみなとみらいといった観光地としての横浜から離れ、生活に密着した商業施設や静かな住宅街が広がる、飾り気のない日常の横浜をのぞかせてもらいましょう。

横浜と聞くと、みなとみらい、赤レンガ倉庫、中華街、元町といった華やかな場所やスポットをイメージする人も多いのでは。しかし横浜と一言で言っても湾岸部から内陸部まで広範囲にわたっており、その中には落ち着いた住宅街やのどかな街並みが広がる地域もあります。

今回のSANPO TALKの舞台は、横浜市民以外には少しマイナーな上大岡というエリア。横浜の中心部へはもちろん東京都心部にもアクセスがしやすく、横浜市が「主要な生活拠点」と位置付けてまちづくりをしてきた場所でもあります。

そんな上大岡をナビゲートしてくれるのは、株式会社イーシーナの代表取締役社長、鴇崎魚彦(ときざきなひこ)さん。3年ほど前から、上大岡に家族3人で暮らしています。

「やっぱり横浜というと、山下公園やみなとみらいなどに足を運ぶ方が多いと思うんです。でも今回のお散歩では、横浜で暮らす人の日常を感じてもらえるコースを案内しながら、横浜がもつ別の表情も知っていただけたらと思っています」

上大岡駅に集合したのち、駅前を走る鎌倉街道を南へ。通りの両サイドには百貨店や家電量販店などが立ち並び、人々の往来も多くて活気があります。

「まずは、上大岡に住む人なら誰もが馴染みのあるスポットに行きましょう」

そう言って案内してくれたのは「アカフーパーク」。ここは1972年に「赤い風船ビル」という名で開業した商業施設で、2017年にスポーツ、アミューズメント、グルメ、ショッピングの要素をひとつにしたアカフーパークとしてリニューアルされました。

「本館1階は上大岡駅前から南部の住宅街へと抜けられる通路のようになっていて、その両脇にお店などが立ち並んでいます。建物の内部が散歩コースになるというのはなかなかないんじゃないですか?」

通路の両脇のお店は時折リニューアルされ、地元の人々にとってはその変化も楽しみのひとつなのだとか。ちなみに以前は食品雑貨のお店や書店があったそう。

「今は南側の一角が『野菜マルシェ』という八百屋さんになりました。あとはカプセルトイやクレーンゲームのコーナーが特に充実していて、娘とここを通ると、どちらかを絶対におねだりされてしまうんです(笑)」

普段は家族で訪れることが多いものの、今日はひとり。娘さんへのお土産になればと、張り切ってクレーンゲームに興じる鴇崎さんでしたが、残念ながらお目当てのぬいぐるみはゲットできず。「今度、娘と来たときには取ります!」と言いながら通路を抜けると、そこには人工芝が敷かれステージが設置されたある広場がありました。

「ここはアカフーパークの敷地の中央にある『わくわく広場』。ベンチもあって地元の人の憩いの場となっているスペースなんです。僕はここを駆けまわる娘を見守りながら、目の前のスーパーで買ったアイスを食べる、なんてことをよくします。週末にはフードカーが来たり、ステージでライブが開催されたりしてとても賑わうんですよ」

しばし休憩を挟んだところで、お気に入りのグルメスポットを案内してくれるという鴇崎さん。アカフーパークを出てさらに南へと歩いて行きます。

「ここは最近できたパン屋さんで、午前中に行かないと欲しいパンが買えないほど人気なんですよ」
「こっちは創業からおよそ100年という家具屋さんで、ミッドセンチュリーモダンのおしゃれなアイテムが揃ってます」
「通りの向かい側に見えるのは老舗の大福屋さん。お店の前にずらっと行列ができていることがよくあります」
「この先の高台にあるのが久良岐(くらき)公園。眼下に横浜市内が一望できて、晴れていると富士山も見えるんです」

こうして何気なく歩く道中で、目に入るお店やスポットを次々と紹介してくれる鴇崎さん。彼の地元への愛着もさることながら、それだけ上大岡には、街角のちょっとした場所にも見どころがたくさんあるのです。

「あそこです。僕が上大岡で一番好きな場所かもしれません」と言って指さした先にあったのは、ラーメン店の「G麺7(ジーメンセブン)」。地元以外のラーメンファンからも愛される上大岡の人気店です。

「ここはラーメンがおいしいのはもちろんなんですが、背中に「上大岡発祥」と入ったスタッフTシャツや、サビ加工を施した鉄の看板など、お店全体に店主のこだわりが感じられるんです」

鴇崎さんがオーダーしたのは、シンプルな「らーめん正油」。スープには店主が吟味を重ねた7種類の醤油をブレンド。さらに麺に使われる小麦も北海道産とオーストラリア産を独自に配合するなど、厳選した素材を絶妙なバランスで融合させた一杯です。

「スープは見た目以上にさっぱりしていて毎日でも食べられます。そしてそこに絡む自家製麺が最高。見た目もツヤがあって、僕は勝手に“世界で一番美しい麺”と呼んでいます。澄んだスープと絡むツルツルの食感がたまりませんね」

こぢんまりとした店内ながら、テーブル席があって家族で訪れやすい点も鴇崎さんのお気に入り。そんなG麺7でおいしいラーメンを堪能し、再び散歩に戻ります。2つの会社を経営し普段から多忙を極めている鴇崎さんにとって、こうした散歩の時間はとても貴重なのだとか。

「のんびり散歩できる時間って尊いなと思うんです。忙しいとつい足もとやスマホなど、下を向いて歩いてしまうことが多い。でも歩きながら空を眺めたり、景色の変化を楽しんだりできる時間をもっと大切にしながら生きたいなって」

散歩をすることが仕事にいい影響を与えることが多いと鴇崎さん。

「立場上、次の事業や会社の方向性などについて考える時間が多いんですが、そんなときにいい閃きが降りてくるのがたいてい散歩中なんです。おそらく心と頭にほどよい“余白”が生まれているからだと思います。散歩をしているときは、パソコンなどに向かっているときと別の思考回路でフレッシュに物事を考えられるんですよね」

上大岡散歩の締めくくりに案内してくれたのは大岡川。横浜市内を流れて桜木町の傍から横浜港へと注ぐ河川で、かつては横浜の地場産業として栄えたスカーフの染色も行われていました。

「川辺に降りて歩いてみたり、橋の上から川の流れを眺めたり。地元を散歩するときには必ず訪れる場所がここなんです。水の流れる音、季節ごとに変化する草木、川を泳ぐ魚たち。やっぱり水辺というのは独特の癒しがありますよね」

地域に密着した商業施設、絶品のラーメン、心が洗われる癒しスポット。巡っているうちに、上大岡が横浜のベッドタウンとして支持されている理由が分かりました。たまには喧騒を離れて、その街の何気ない日常に触れられる散歩もいいものですね。

アカフーパーク
住所:神奈川県横浜市港南区上大岡西2-1-28
電話:045-843-2023

G麺7
住所:神奈川県横浜市港南区上大岡西3-10-6
電話:045-517-3918

PROFILE

鴇崎魚彦(ときざきなひこ)
2015年に海外ブランドの雑貨・スポーツアイテムの販売などを行う株式会社Xcountryに参画。2017年にはアウトドア事業をメインとする株式会社イーシーナを立ち上げ、現在代表取締役社長。同社では、ASICS WALKING JOURNALでも紹介している「なぞときFUNロゲイニング」も主催している。
Photo : sonnzinn
Edit+Text : Taro Takayama(Harmonics inc.)