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歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK
#06 視線の先に好奇心を。
おしゃれな街をディープに楽しむ駒沢~三軒茶屋散歩

#WELL-BEING 2023.03.16

歩く、話す、見つける、
とっておきの街歩き。
SANPO TALK -駒沢~三軒茶屋・古畑 徹編-

その街をよく知るナビゲーターがおすすめの散歩コースを紹介しながら、ご自身のウォーキングスタイルについて語る連載企画「SANPO TALK」。第6回目は、大手マスメディアでブランディング業務を担当している古畑 徹さんが、駒沢~三軒茶屋周辺をナビゲートします。おしゃれなカフェや雑貨店など、このエリアならではの魅力的なスポットの数々を巡りつつ、今回は古畑さんのちょっと変わった散歩のお供にも注目。街歩きのよりディープな楽しみ方の一端をのぞかせてもらいましょう。

都内屈指の広さを誇る駒沢オリンピック公園(以下、駒沢公園)を中心に、閑静な住宅街が広がる駒沢。そして、国道246号線と世田谷通りが交わる古くからの交通の要所で、たくさんの飲食店がひしめき合うことでも知られる三軒茶屋。ともに住みたい街としても人気の高い2つの街が、今回の散歩の舞台です。

スタート地点は駒沢大学駅。ナビゲーターの古畑 徹さんにとって、このエリアは初めての一人暮らしを経験した思い入れのある場所なのだそう。

「この近くには4年ほど住んでいました。最近下町の方に引っ越したばかりなんですが、今でも駒沢や三軒茶屋の雰囲気が恋しくなることがしばしば。今日は以前よく歩いていたお気に入りの散歩コースをご案内します」

そう言って246号線を駒沢公園通りに向かって歩きはじめた古畑さん。このあたりは駅から駒澤大学までの通学路でもあり、朝夕はたくさんの大学生でにぎわいます。駒沢交差点を左に曲がると、駒沢散歩の定番スポットである駒沢公園の入口が見えてきました。ですが古畑さんはそこを素通り。

「まずはこの先にあるカフェに立ち寄って、コーヒーとサンドイッチでも買っていきましょう」

そのまま駒沢公園通りを進んだ先にあるのが、世田谷区代沢にある人気カフェ「YELLOW」の2号店「YELLOW KOMAZAWA KOEN」です。絶品のコーヒーだけでなく、週替わりのマフィンやボリューミーなサンドイッチなどフードメニューも充実しており、イートインスペースもあります。実はYELLOWのコーヒー、古畑さんにとってはとても思い出深い味なんだとか。

「仕事でものすごく落ち込んだ日があったんです。帰宅後、気分転換に普段は歩かないルートを散歩したときにたまたま見つけたのが、代沢にあるYELLOWの1号店でした。当時の僕はコーヒーが苦手だったんですが、そのときは半ばヤケな状態だったんでコーヒーでも飲んでやろうと思ったんですよ(笑)。そうしたらものすごくおいしくて、その味に心まで救われた気がしたんです。それ以来、YELLOWのコーヒーが大好きになり、2021年に2号店がオープンしてからは、こっちにも足を運ぶようになりました」

「素敵なお話ですね。光栄です」。そう言いながら店員さんが手渡してくれたサンドイッチとカフェラテを手に、ここからは駒沢公園の中をのんびり歩きます。

「都内のいろいろな公園を巡りましたが、駒沢公園が一番のお気に入りです。敷地の広さも人の密度もちょうどよくて、いつ来ても落ち着けるんですよね」

さらに「公園の音も好きなんです」という古畑さん。木々のさざめきや鳥の鳴き声はもちろん、園内に点在する競技場やグラウンドからスポーツをする音が聞こえてくることも、駒沢公園がお気に入りの理由なのだとか。

音も楽しみながら園内を進み、高さ40mのオリンピック記念塔が立つ中央広場でしばしのコーヒータイム。ここで古畑さんに、普段どのように散歩を楽しんでいるのか聞いてみました。

「散歩をするときは、よくラジオを聴いています。特に深夜ラジオのトークのテンポと、歩くテンポってすごく相性がいいんです。あとラジオって不思議で、歩いているとふと、前にそこを歩いたときに聴いていたラジオの記憶がよみがえったり、逆にラジオの面白かったトークを思い出したときに、それを聴きながら歩いていた場所が鮮明に浮かんできたりする。どうも散歩の記憶と聴覚には不思議な結びつきがあるような気がしますね」

さらに古畑さんには、まだまだ散歩に欠かせないアイテムがあるのだそう。

「写真が趣味なので、いつもカメラをもち歩くようにしています。街中にある電柱や電線が好きで、いい感じの空や西日を背景に電柱を撮るのにハマってるんです。ちょっと変わってますよね(笑)。あと欠かせないのが地形アプリ。歩きながら、今いる場所が昔どんな様子だったのかを想像するのがすごく面白いんです」

電柱を見上げたり、足下に目を落としたり、さらには過去に想いを巡らせたり。古畑さんにとっての散歩は、常にさまざまな好奇心や探求心を刺激してくれる時間のようです。

次の目的地までの道すがら、古畑さんが地形アプリを開きました。

「たとえば今下っている道ですが、この先で上り坂になっていますよね。この場合、一番低くなっている谷の部分には、かつて河川が流れていた可能性が高い。そんなことを地形アプリで確認しながら歩くんです。僕にとっては散歩中に見えるあらゆるものが興味の対象なので、何km歩いても飽きることがないですね」

地形アプリを片手に何気ない住宅街や遊歩道をのんびり散策しながら、三宿方面を目指します。やがて見えてきたのが次の目的地、「PUEBCO MISHUKU」です。

「散歩の途中で何度も立ち寄ったお気に入りのお店なんです」という古畑さん。PUEBCOはパラシュート生地や一斗缶などをリユースしたプロダクトをはじめ、個性的でユニークなインテリア雑貨を展開しているブランド。店内には、小さなキッチン雑貨からヴィンテージの椅子や棚まで、ところ狭しと多彩なアイテムが並んでいます。

「たまたまYouTubeでPUEBCOの商品を知って、ずっと気になっていたんです。あるときお店の場所を調べてみたら“うちの近くじゃん!”となって、それ以来よく来るようになりました。実際にディフューザーやディスプレイスタンドなどを購入して、今でも愛用していますよ」

訪れるたびに新しい発見があるというPUEBCO MISHUKUを存分に満喫した古畑さん。次は一路、三軒茶屋の中心街を目指します。

「次が今回の散歩コースの最後の目的地です。三軒茶屋のど真ん中の雑居ビルにあるカフェなんですが、隠れ家のように落ち着ける空間で、散歩の締めくくりにぴったりだと思います」

そう言って案内してくれたのが「a-bridge」。世田谷通りから三軒茶屋の中でもディープな飲み屋さんが軒を連ねることで有名な「三角地帯」の路地を入っていき、薄暗いエレベーターで雑居ビルの最上階へ。確かに隠れ家感たっぷりのお店です。

2004年にオープンしたというa-bridgeは、昼はカフェ、夜はダイニングバーとして営業している人気店。個性的ながら居心地のいい空間は、オーナーさんが仲間たちとDIYで作り上げたもの。またお店の奥には屋上テラスがあり、三軒茶屋の街並みを一望できます。

ソファに腰かけ、もうすっかり飲めるようになったコーヒーでひと息。今回、地形や音、匂いなど、あらゆる観点から歩くことの面白さや魅力を気づかせてくれた古畑さん。これからも最高の趣味として、あらゆる場所を歩きたいと話します。

「実は、4年も住んで愛着のあった場所から、あえて下町の方へと引っ越したのには理由があるんです。それは東京の東側もたくさん歩いて、街や道についてもっと知りたいと思ったから。それくらい僕は散歩が好きなんですよね。これからも気になる街を拠点にしながら、いずれは東京中の道という道を歩き尽くしてみたいです」

YELLOW KOMAZAWA KOEN
住所:東京都世田谷区駒沢5-19-10
電話:03-5760-6726

駒沢オリンピック公園
住所:東京都世田谷区駒沢公園1-1
電話:03-3421-6431

PUEBCO MISHUKU
住所:東京都世田谷区太子堂1-1-13
電話:03-5432-9081

a-bridge
住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-14-12 三元ビルR階
電話:03-3418-5013

PROFILE

古畑 徹(ふるはたてつ)
2019年にデザイナーとして大手マスコミ企業に入社し、現在はブランディング業務やコンテンツのアートディレクションを担当。散歩だけでなく、写真撮影やラジオ鑑賞、お笑いやアイドルのライブ鑑賞など多彩な趣味をもつ。
Photo:sonnzinn
Edit+Text:Taro Takayama(Harmonics inc.)