睡眠とウォーキングの関係を知って、<br>健康のポジティブスパイラルを目指そう。
WALK ON YOUR COLOR
#06 GOOD SLEEP AND GOOD WALKING
よい睡眠は、ウェルネスライフの鍵。

#WELL-BEING 2022.11.01

睡眠とウォーキングの関係を知って、
健康のポジティブスパイラルを目指そう。

ウォーキングとビューティの関係を紐解く、ビューティライターAYANAの連載「WALK ON YOUR COLOR」。毎回テーマを変え、ウォーキングというフィルターを通してキレイのヒントを探ります。
第6回のテーマは、毎日の疲労を回復し、活動的でいるために重要な「睡眠」。質の良い睡眠を効率的に取りたいけれど、そのためにはどんなことに気をつければいいのでしょう。ウォーキングが睡眠にもたらす影響は?そもそも「いい睡眠」ってどんなもの?睡眠とウォーキングの関係性にまつわるトリビアを、早稲田大学睡眠研究所所長の西多昌規先生がナビゲートします。

●「いい睡眠」の定義とは?

私たちが元気に活動していくためには、いい睡眠が必要である──これはもう周知の事実といっていいでしょう。では、いい睡眠とはどんなものか。巷には「適切な睡眠時間の量は○時間」「睡眠のサイクルは90分だから、その倍数で眠るべき」「22時から2時は睡眠のゴールデンタイム」などさまざまな説がありますが、どれを信じればいいのでしょうか。西多先生は「人によって適切な睡眠時間は異なります」と話します。

「睡眠のサイクルが90分というのはおおよそ正しいのですが、人によって微妙にズレがありますから、きっちり90分の倍数にすればいいとも言い切れません。若者は朝起きにくく、老人は長く寝ていられないとか、夏よりも冬は日照時間が短くて朝起きにくいなど、同じ人間でも季節や年齢によって適切な睡眠時間に変化が出てきます。短くてもダメ、長すぎてもダメ。単純に○時間寝ればいいと定義するのが難しいのです」。大切なのは「日中元気で活動でき、眠気に左右されないという実感があること。これがあればいい睡眠が取れていると言えるそう。

ちなみにゴールデンタイム説については、そこまで意識しなくて大丈夫。「入眠後の早い段階で、深いノンレム睡眠が出現するタイミングがあり、そこで成長ホルモンの働きがピークを迎えます。これをゴールデンタイムと言っているに過ぎず、誰もが22時スタートというわけではありません。ただ、眠る前までスマホを見たり、夜遅くまで残業したりといった活動は、脳がリラックスせずすぐに安眠できません。そういう意味では、宵っ張りの人はゴールデンタイムの質が少し落ちてしまうといえますね」。

睡眠不足は、注意力、集中力、思考力、バランス感覚など、あらゆるものを低下させてしまいます。最近は、平日の睡眠不足を土日に解消しようと寝だめする「ソーシャルジェットラグ(自宅にいながら時差ぼけしている状態)」は生活習慣病のリスクとして注目が集まっています。平日も極力早寝を心がけて、自分軸の「いい睡眠」を意識してみるといいでしょう。

●運動が睡眠にもたらす効果とは?

「いい睡眠には光、食事、そして運動という3つの要素が必要です」と西多先生。「光、特に朝は太陽光を意識して。朝起きたらカーテンを開け、太陽の光を入れることでメンタルが整います。いつまでも薄暗いとシャキッと覚醒できません。逆に夜は明るいままだと脳がなかなかリラックスしないので、睡眠の質が下がってしまいます。食事については、朝食をとることで体内に覚醒のスイッチが入ります。体内時計のマスタークロックは脳と言われますが、胃袋の細胞にも調節因子があるといわれているからです。夜はあまり遅くにとると胃に負担がかかり、眠りも浅くなってしまうため、消化のいいものを適切な時間にとりましょう」。

それでは、運動はどのように睡眠へ影響していくのでしょう?「運動することによって、適度な疲労がもたらされ、それによってよく眠れる、そしてよく眠れると運動でまたパフォーマンスを発揮できる。このポジティブなスパイラルを確立していくことが大事です」。とはいえ「深夜に明るいジムで運動する」などは体内時計の妨げとなり、睡眠には逆効果。正しく適度な運動を心がける必要があります。そこでおすすめなのが、ウォーキングなのです。

適度な運動とは、少し汗ばむくらいの負荷がかかったものが理想的です。ウォーキングでも、のんびりと散歩するよりも、やや足速で歩いてみる、傾斜や階段を歩いてみる、ウエイトをつけるなど、少しキツさを感じるようにするといいでしょう。歩くことは人間の基本動作ですし、ぜひ毎日の習慣にするのをおすすめします」。

●よいウォーキング×よい睡眠を積み重ねていこう

「日本人は4割くらいスポーツ実技が嫌いというデータがあり、学校授業(体育)の弊害と言われています。体を動かすことに苦手意識を持っている方にも、ウォーキングは強くおすすめ。運動神経に左右されないし、特別な技術を必要としないからです」。ウォーキングは、運動が得意でないと感じている人でも真っ先に取り組むことができます。「ひとりでも、どんな場所でもできますから、続けやすいですよね」。

また、運動を継続していくと、その日の熟睡以上にさまざまなよいことが。具体的には以下のとおりです。

・脳神経を整えるので、メンタルをすこやかに保つことができる
・代謝があがって体が引き締まる
・免疫系、内分泌系が整う

心身が整うことで、睡眠の質も向上していきます。睡眠も運動も「自分に合うスタイル」を見極めることが大切!ぜひ心がけてみてください。

Illustration:Tuna Dunn (vision track)
Photo:Sonoko Senuma

PROFILE

西多 昌規
Masaki Nishida, M.D., Ph.D.
早稲田大学スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 准教授  
早稲田大学睡眠研究所 所長
睡眠や体内リズムと身体運動、スポーツとの関連性を、科学的に明らかにしていくことを目指し活動。精神科医の経験を活かし、アスリートの睡眠障害や抑うつ・不安、発達障害などの課題にも取り組む。

PROFILE

AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美のために生み出されたモノや美に携わる人々についての執筆を行う。化粧品メーカー企画開発職の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。2020年より、文章講座EMOTIONAL WRITING METHOD(#エモ文)を始動。OSAJI メイクアップコレクションディレクター。近著にエッセイ集『「美しい」のものさし』(双葉社)がある。