自分だけのマットな経年変化を楽しむコツ
靴のプロフェッショナルが教えるTIPS集
SHOES MASTER’S VOICE
vol.11 スエード靴のケア方法

#TIPS 2024.08.21

自分だけのマットな経年変化を楽しむコツ

人が快適に「歩く」ためのシューズをビジネス、フォーマル、カジュアルなどのシーン別に提案しているASICS WALKING。そんな靴選びのプロフェッショナルが靴にまつわるノウハウをレクチャーする「SHOES MASTER’S VOICE」。第11回目は「スエード靴のケア方法」です。起毛革としておなじみのスエード。柔らかで温かみのある質感はカジュアルからドレスまでさまざまなシーンで活躍します。生地が厚くタフな素材でもあるため、つい使用機会が多くなってしまいがち。スエード靴を長く愛用するためのお手入れ方法をご紹介します。

特徴、用途、弱点まで、スエードの基本

スエードはやわらかくてしなやかな皮革素材です。皮革の裏面を使った起毛加工を施しているため、独特の滑らかな質感とマットな見た目が特徴的。この起毛は革の裏面を研磨することで、細かい繊維が立ち上がった状態につくられます。

スエードの豊かなテクスチャーはラグジュアリーからカジュアルまでさまざまなスタイルを演出します。靴以外の用途ではバッグ、ジャケット、手袋など、さまざまなファッションアイテムに使用されているだけでなく、車の内装に利用されることも。みなさんもひとつはスエードの製品をお持ちかもしれません。

多くの特徴があるなかで、スエードには水分に弱く、湿気や雨にさらされると繊維が固まり、シミになりやすいという一面もあります。スエード製品を使用する際には、雨の日や湿気の多い環境を避けることが無難です。防水スプレーなどで、しっかりと保護しましょう。さらに、写真のように経年変化が表れやすい点もスエードの特徴ですが、言い方を換えるとキズやシワがつきやすく、特に油や泥などの汚れが目立ちやすいので、日常的に専用のブラシやクリーナーを使ってケアしてください。

スエード専用のケアで、自分だけの経年変化を育てよう

ケアグッズのご紹介です。ブラシはできればやわらかいゴム製や金属製のタイプを使ってください。皮革の汚れ落とし用に砂消しゴムとガムクリーナー、ダメージが酷い場合はサンドペーパーのご準備も(砂消しゴムに含まれている場合もあります)。色合いを鮮明に保つために栄養ミストも欠かせません。そして、お手入れの仕上げには防水スプレーもお忘れなく。

実際にケア方法をレクチャーしていきましょう。今回は真鍮入りのブラシを使用して、表面の汚れやホコリを取り除きます。ブラッシングは優しく行い、スエードの起毛をキズつけないように。ブラシを使う方向は一定にし、サッと繊維を整えるようにすることがポイントです。強めにブラッシングするだけでも履きジワが目立たなくなるんですよ。

汚れが目立つ部分には砂消しゴムとクリーニングガムを。汚れを吸着させながら擦り落としていきます。

ブラッシングで毛並みを整えるだけでも見た目の印象は良くなりますが、表面が褪色している部分にはスエード専用のクリーナーを使用して、シミや汚れを取り除きます。クリーナーを使用する際は、まず目立たない部分に噴射してから全体に使うようにしましょう。汚れを落とした後は再度ブラッシングして起毛を整えます。スエードは色褪せしやすいので定期的に保湿して栄養を与えてことが大切です。

仕上げは防水スプレーでプロテクト。スエード繊維1本1本に撥水・撥油効果を与えることで汚れが付きにくくなり、通気性を損なわずに水分や油分を弾くことができます。スプレーは靴全体に均一に噴射するようにして、十分に乾燥させる時間を設けましょう。

前述のとおり、スエードは経年変化が表れやすいので、ダメージの度合いにもよりますが、入念にケアしても元の状態に近づくということは難しい素材です。でも、一つひとつの履きシワはその人が愛用している印でもあります。ぜひ長く履き続けることで、自分だけのアジを育ててください。次回は「シューシャインで、美しい輝きを」をお届けします。

PROFILE

甲田愛子
アシックスウォーキング 渋谷 店長

2012年、アシックスジャパン株式会社に入社。以来、アシックスウォーキングでリテールを担当。地元である横浜を皮切りに店舗スタッフとして、アシックスウォーキング 横浜、鶴見、自由が丘に勤務。店長として、アシックスウォーキング 蒲田、自由が丘を歴任し、現在はアシックスウォーキング 渋谷の店長を務めている。
Photo:rai
Edit+Text : Shota Kato(OVER THE MOUNTAIN)