ASICS WALKING JOURNALの編集長・川辺洋平（以下、川辺と略記）と巡るアシックスの奥深き世界。今回は創業時から今日にかけての歴史に通ずる人間工学とテクノロジーにフォーカス。「アシックス スポーツ ミュージアム」と神戸三宮の直営店舗からお届けする。

「アシックス（asics）」の社名のもとにもなっている言葉「Anima Sana In Corpore Sano（健全な身体に健全な精神があれかし）」。創業者・鬼塚喜八郎により会社の精神として大切にされてきたこの言葉を体現するべく「アシックス スポーツミュージアム」はスポーツ文化の継承を目的として設立。全国の小中高生をはじめ海外からも多くの人が来場し、開業10周年を迎えた2019年にはのべ12万人の来場者数を超えた。

取材と称して「アシックス　スポーツミュージアム」で歴史あるアシックスの数々のシューズを堪能していると、マイシューズが欲しくなってきた編集長。ミュージアムを出たその足は、夕暮れのアシックスウォーキング直営店に向かっていった。

この日、ミュージアムの入り口で迎えてくれたのは、2021年に開催された第32回オリンピックとパラリンピック競技大会に出場した日本代表選手団のためのオフィシャルスポーツウエアと、オーストラリア、ウルグアイ、ブルガリア、フィリピンの4カ国のトレーニングウエア。ミュージアムでは展示品を時節柄に合わせて常に入れ替えている。

1階のエントランス横にある階段から、まずは2階の「HISTORY FIELD /ヒストリーフィールド」と呼ばれるフロアへ。1949年は「鬼塚株式会社」の創業年。鬼塚喜八郎が社員4名で立ち上げたところから、オニツカ株式会社、株式会社ジィティオ、ジェレンク株式会社の3社が1977年に合併するまでの史実がまとめられている、貴重な歴史を垣間見ることができるスペースだ。

トップアスリートがアシックスのシューズを練習や試合で着用することが今では一般的だが、ブランドの歴史は意外にも戦後日本における青少年のスポーツを通じた健全育成にあった。スポーツを楽しむことを目的とするだけでなく、その先にある健全なライフスタイルへの思い入れは、アシックスの創業以来続く精神といえる。

1983年、スポーツシューズの履き心地と革靴のデザインを併せもち「歩く」ことに特化したウォーキングシューズの原点「ペダラ」が発売されたことも、そうした歴史的観点からいえば全く自然なことかもしれない。

ランニングブームはこれまでも歴史の中で繰り返してきたが、「ペダラ」発売当初はランニングブームが一段落し、全世界的に走ることから歩くことへの関心が高まった時代。

カジュアル・スタイルの｢ペダラ｣に、ドレススタイルの｢ワラッジ｣、スポーツスタイルの｢サルティス｣が加わり、アシックスウォーキングの現在を支えるラインナップが揃った歴史が、実際のシューズを見ながら確認できる。

1990年に「アシックススポーツ工学研究所」が設立されると、人間工学に基づいた研究が加速。その歴史は、キッズ用シューズ「SUKU２（スクスク）」の誕生をはじめ、アシックスの対象とする年齢の幅広さをサイエンスとテクノロジーが後押しした歴史そのものだということが展示から伝わってくる。技術開発力を支える、シューズの根底に流れるのは「身体を知る」ことへの探究心だ。

ここまでアシックスの情報を滝のように浴びた編集長が「最近そういえば、自分の足のサイズが変わった気がする。自分の足に合うアシックスウォーキングのシューズがほしい」と探究心をみなぎらせる。編集部は早速、ミュージアムに後ろ髪を引かれながら、三宮にあるアシックスウォーキングの直営店に向かった。

こちらがミュージアムから足を運んだ神戸市・三宮にあるアシックスウォーキング直営店。アシックスファンならおなじみの「3次元足形計測」を提供している。「3次元足形計測」では足長、足囲、かかと幅、足高、かかとの傾斜角度、第一趾側角度、アーチ高という7項目を基準に足の形を左右それぞれに測定するサービスだ。

計測から結果のデータ印刷まで所要時間は15分ほど。詳細に足の形が記された計測データを見ながら、おすすめのサイズ感やデザインについて店舗スタッフと話し合うことができる。測定データは全国直営店で共通のデータベースに保存されており、いつでも過去のデータと比較することができるのも特徴だ。

ちなみに編集長が前回アシックスウォーキングの直営店舗で測定した日付を調べてもらうと、なんと4年前。編集長が体感として感じていた自分の足長の変化は、データによると全くの「誤解」だということもわかった。データは議論にまさる、とはまさにこのこと。アシックス直営店舗での3次元足形計測は無料で受けることができるので、ぜひ直営店を訪れて体験してほしい。

アシックス本社からアシックスアーカイブを巡り、アシックス スポーツ ミュージアムからアシックスウォーキングの直営店へ。デザインと人間工学に基づいたアシックスの伝統ともいえるものづくりの精神は、売り場にも、愛用者にも先進のテクノロジーで快適さを提供し続けていた。

【アシックス　スポーツミュージアム】
所在地  神戸市中央区港島中町7-1-1
電話番号 078-303-1329（お問い合わせ、お申し込み）
アクセス ポートライナー（「北埠頭」行き乗車）で 「中埠頭」駅下車徒歩約2分
開館時間 10:00～17:00（最終入館時間は16:30）
休館日  毎週日・月曜日、祝日、年末年始休暇、夏季休暇 入館料 無料

【アシックスウォーキング 三宮】
所在地  兵庫県神戸市中央区三宮町1-4-16
電話番号 078-391-2075
営業時間 11:00-20:00 (日曜・祝日は19:30閉店)